第一回
『恋は人を強くする!!崖ぷちヒーロー始動!!初回特別編』
「俺は強い・・俺は強い・・俺は強い・・。」
ハーフタイム終了直前、目を閉じてそう呟く直輝・・。
上矢直輝(山下智久)は、PBA=プロバスケットボールアソシエーション
傘下のプロチーム『JCアークス』の選手。
中学、高校、大学と、華々しい活躍を続けてきた直輝は、
2年前にアークスに入団した。
しかし、プロ入り後は、他のプレーヤーとの体格差などに加え、
いざというときにプレッシャーに弱いタイプであることも相まって、
思うように実力を発揮できずに苦しんでいた。
直輝の実力を評価しているヘッドコーチの川崎智哉(伊藤英明)は、
そんな彼の姿を歯がゆい思いで見つめていた。
音大出身の白河莉子(北川景子)は、書店でアルバイトをしながら
プロのバイオリニストを目指していた。
だが、とあるオーケストラのオーディションでは、フルート奏者で
親友でもある海老名麻衣(貫地谷しほり)は合格したものの、
莉子は、演奏中に弦が切れるというアクシデントもあって落ちてしまう。アークス試合会場
プレーオフ進出がかかった大一番、直輝は大事なところでシュートを
外してしまうが、宇都宮のブザービートで見事勝利する。
オーディションを終えた莉子と麻衣、試合を終えた直輝と秀治(溝端淳平)が
偶然同じバスに乗合わす。
オーディションに落ちてしまった莉子。
大切な一本を決められなかった直樹。
スポーツと芸術、別々の世界に住む二人ですが、どこか似ています。 ]
バスの中、自分よりも先にお年寄りに席を譲る直輝のことを U
微笑みを浮かべて見つめる莉子なのでした。
バスを降りた直輝と秀治。
秀治は直輝の恋人・菜月の足が綺麗だと褒め、自分はおへそフェチだと語る。
「おへそとか、足とかそういう問題じゃないんだ、あいつのいい所は。
ハートがいいんだ。
俺はあいつと本気で真剣に付き合っているんだ。
・・・ちょっと待って・・携帯忘れた!!」
直輝は走り去るバスを追いかけ始め・・。
バスの中
ガールズトーク炸裂させる莉子と麻衣は、バスを必死に追う直輝に気付く。
直輝のジェスチャーに、シートに置かれた携帯に気付く莉子。
その時直輝の携帯が鳴り・・。
莉子は、たまたま直輝の携帯に電話してきた川崎に事情を話した。
川崎は、いまから持ち主に会うから、といって莉子たちと待ち合わせを
する。
「ねえ、バスケットチームの人かな?」
携帯のストラップから想像する莉子。
「ただの大学生でしょ。ま、関係ないけどねー。
山田先輩が言ってたよ。ああいう脳みそ筋肉のスポーツ系男子と
うちら芸術系みたいなこういう女子は合わないって!全く。」
「でも、悪い人じゃなさそうだよ。
こんな可愛い待ちうけにしてる。」
バスケット選手のアニメ画を見つめて微笑む二人。
そこへ、川崎から電話が入る。
「美青年!いいかも、スポーツ系男子!」と麻衣。
「あの・・川崎ヘッドコーチさん?」と莉子。
「え?なぜ・・名前を?」
「着信表示に名前が。」
「ああ!」
「これ、ですよね?」
「これです。
良かった!助かりました。
うちの選手のもので。」 :
「選手?」と麻衣。
「はい。今から会うんで、届けてきます。
本当に、ありがとうございました。」
「そうでしたか。良かった。」
「・・・あの・・いえ。」莉子に見とれる川崎。
「じゃあ・・。」
その時、夜空に大きな花火が上がる。
3人は花火に見とれ・・。
なぜかお互いを見てsいまう川崎と莉子。
「あの・・良かったら、連絡先聞いてもいですか?」
「はい。」
祝勝会会場の前で花火を見上げる直輝と菜月(相武紗季)。
「・・・あのさ。」
「うん。」
「もし、次のプレーオフでアークスが優勝したら・・」
「・・・」
「もし、優勝したら・・俺と、結婚して下さい。」
「・・・」「・・・」 、
「うん。勝ったらね!」
「やったぁ!!」 、
菜月にキスしようとする直輝。
「あ、待って直輝。」
菜月の視線に後ろを振り返ると、チームメイトたちが覗いていて、
二人を冷やかすのだった。
祝勝会
川崎は直輝に携帯を渡し、出会いをくれたことに感謝する。
「それでは、プレーオフ出場を祝って、乾杯!!」
「かんぱーーい!!」
「この日から、運命のボールがティップオフされていたことを、
僕も彼女も、まだ全然知らないでいた。」
アークスは、キャプテン・宇都宮透(永井大)らの健闘も及ばず、
早々にプレーオフから敗退してしまう。 ]i
試合でいいところがなかった直輝は、悔しさを隠せなかった。
試合後
「今日から、一ヶ月のオフ。
それぞれの契約の更新やら、年俸の交渉やら、いろいろある。
一ヵ月後には、ここを去っているものもいるだろうし、
新しいメンバーもいるかもしれない。
でも俺は、また来期も、ここにいるみんなと一緒に戦いたい。
またここに集まって、今度こそ優勝を目指して頑張ろう。」
川崎ヘッドコーチが選手達にそう告げる。
バスケットゴールを見つめる直輝。
「こうして、俺達の2008年のシーズンは終了した。」
ロッカールーム
直輝は菜月への婚約指輪を見つめ・・箱をパタっと閉じる。 |
上矢家
手際よくフレンチトーストを作る直輝。
「お兄ちゃんのフレンチトースト好き!」
「私も!」
妹と母親は大喜び。
「じゃあ、俺そろそろ行ってくるね。」
「あら珍しい。今日は?会社なの?」
「年俸のことで呼ばれてる。」
「行ってらっしゃい!
あ、帰りにクリーニング取ってきてねー!」 ]
「やっぱ落ち込んでんのかな、お兄ちゃん。」
「そうね。今年こと優勝って張り切ってたから・・。
私も直輝の結婚式には、着物のほうがいいか、シックなドレスの方が
いいか、考えてたんだけどね。」
「ママ、気が早すぎ!」
「だって、菜月ちゃんいい子じゃない。
礼儀正しいし可愛らしいし!」
「私はちょっと苦手。だってちょっと完璧すぎるもん!」
「そういう子が丁度いいのよ、直輝には。」
自転車で会社に向かう直輝と、
麻衣と莉子を乗せた引越しのトラックが並ぶ。
トラックの運転手が道を聞くために直輝に声を掛けるが、
麻衣と莉子は直輝があの携帯の持ち主だと知る由もなく・・。
会議室
「上矢君、来年度の年俸のことなんだけどね。」
「はい。」
「色々検討したんだが、こんなものでどうかな。」
『3,150,000円』
「え・・315!?」
「まあ、今年よりは少し・・落ちると思うけど、
会社全体がこの不景気だからね。
私達のボーナスだって減らされているんだよ。」
「・・・」
「どうする?君がその金額に不満なら、他に行く権利はあるし、
私には止められないが。」
「・・・すみません。少し考えさせて下さい。」
昼休み、菜月と話す直輝。
「なんだよ315って。去年は450だったのに・・。
こんな年棒じゃ食っていけねーよ。」
「大丈夫だよ。焦って結婚しなくても、私直輝の側にいるから。」
「・・・」
「大丈夫!ね!」
「・・・ありがとう。
そうだよな。移籍選手リストに載れば、もっと俺の実力を認めてくれる
チームから声が掛かるかもしれないし。」
「うん。」
その日菜月に手料理をご馳走すると言う直輝に、
菜月は残業があるからと残念そうにデートをキャンセルする。
帰っていく直輝をいつまでも見送る菜月。
直輝も何度も振り返り、菜月に手を振る。
だが菜月は大きなため息をつき、
「いつかはいつかはって・・いつまでガキのつもりなのよ。」
と呟いて立ち去る。
「ほんっといい女だよな。自分が情けないよ・・」と直輝は呟き・・。
タバコを吸う菜月。
「私が欲しいのはあんたの手料理じゃないんだよね・・。」
直輝が練習場を訪れると、チームメイトの三島が練習をしていた。
「俺も三島さん見習って毎日1000本シュートやってみようかなー。」
「え?」
「いや、今までも300ぐらいはやってたんですけど、こう・・変わりたくて。
強くなりたいです。」
「菜月ちゃんと結婚もしなくちゃだしな。」
「でも・・今はまだちょっと無理ですね。収入が。」
「直輝、俺な、今年で止める事にした。」
「え・・」
直輝が風呂に浸かっていると、川崎がやって来た。
「お前又何か入れたろ!」
「はい。もう誰も来ないと思って。」
「ラズベリーバス・・。何が悲しくて男同士でピンクの湯に
入らなきゃならないんだよ。」
「・・・川崎さん。」
「うん?」
「三島さんどうなるんですか?」
「・・さあな。誰かが止めないと新しい選手が入らない。
悲しいが、プロとはそういうもんだ。
プロっていっても、野球やサッカーみたいに目立たないし、
可愛い女子アナと結婚できたりもしないけどな。」
「・・・」
帰り道
「お前割りとルックスいいんだからさ、実力さえあれば、
日本バスケ会のトップスターになれるのに。
なのにプロ入りして2年経っても、お前は本当にいざという時に
弱い!何でだ?」
「俺もわかってきているんです。自分がそんなに強くないこと。
いや、自信はあったんで。
バスケ始めてからずっと、周りより全然上手かったし、
中学高校、大学の時も賞とかもらったし。
でもそれが今じゃ、腕が長くて背が2メートル以上の外人も沢山いるわ、
幅のある選手は山ほどいるわで・・
わかったんです。思いあがってたってことが。」
「いいんじゃない?思いあがりは、若者の特権だ。」
「いやでも・・そんなに若くないですし。」
「そんなことないよ。お前まだ24だろ?」
「もう24っすよ。
こんなこと周りのせいにして、被害者ぶれる年でもないですし。
本当は、25までに親に家買ってやるつもりだったんです。
菜月と結婚して。」
「・・へー。直輝結婚とか考えてるんだ。」
「はい。早く結婚したいほうですから。
で、子供に同じアークスのユニフォーム着せて、 ^
試合に勝ったら肩に乗せて、パパ勝ったぞ!って、やりたいですね。」
「直輝すごいね!」
「でもどれも全然ダメで、正直焦りますよ。
自分がこんなにダメで弱っちいなんて。
・・・もっと強くなりたいのに。」
「ま、男ってものは、実際そんなに強くないからな。」
「・・・」
「強くないよ。
でも、それでも男は、強くなきゃいけないんだ。
強くなれない気分の時があったとしても、強く見せるための
プライドまで無くしたらダメだ。
だから、そういう顔は、女の前で絶対に見せるな。」
「はい。」
「移籍先、決まらなかったらいつでも戻ってこいよ。」
「ありがとうございます。」
引越しの片付けをしながら、憧れの音楽家・中西のCDをうっとり
眺める莉子。
「会いたいなぁ、中西先生!」
「莉子と男の趣味絶対合わない!」
「うわ、麻衣、何この化粧品の数!」
「これが昼用、これが夜用、これが日に焼けた時のホワイトニング。
そしてこれが週末の特別ケア。」
「へー。
これが、私の。これだけ!」
「何この質素な基礎化粧品!
知ってる?お肌が何も手入れしなくて元気なのは、二十歳までなの。
24歳に最初のお肌の曲がり角がきて、それからは、曲がりっぱなし!」
「曲がりっぱなし?」
「若き日のニキビが終わったら、次は小じわや紫外線と戦って。
つまり女の人生は戦い続ける人生なの。
だからね、こういった武器を持たなきゃいけないわけ。」
「あの・・でも、まあいいや。今度また詳しく教えて。」
「・・・」
「あ・・ドの音がするね。」
「ド?車の音しか聞こえないよ?」
「そう?・・・」
耳を閉じ、ボールをドリブルする音に聞き入る莉子。
「・・・あれ?聞こえなくなった。」
バスケットゴールのある公園
「もしもし、上矢です。
・・・わかりました。色々ありがとうございました。」
電話を切ると、直輝はシュートの練習を始める。
ある日、麻衣と莉子が働く本屋に、川崎がやって来る。
「あ!びっくりした!」
「麻衣ちゃんに、本屋でバイトしてるって聞いて。」
「そうなんですか。
あれ?今日、ちょっと声変えてます?」
「わかる?連日試合で怒鳴りつけてるんだ。」
「へー。怒鳴ったるするんですね。」
「そうそう、走れ、下手くそ、みたいに。
試合の後は必ずこうなるんだよ。でも、よく気付いたね。」
「私、耳だけはいいんです。」
「そっか。じゃあ、バイオリニストには最適だ。」
「いえいえ・・楽器だけでは食べていけなくて。
だから、バイトも。」
「でも、エプロンも似合ってるよ。」
「今日は何かお探しですか?」
「あ、うん。えっと・・スポーツコーナーはこっち?」
「スポーツでしたら、あちらになります。」
「ありがとう。
・・じゃなくって。
本当は、君に会いに来た。」
「・・・」
「暫くはオフシーズンだから時間があるんだ。
だから良かったら、どこか遊びに行かない?」
「・・・」
「麻衣ちゃんも一緒に。俺も誰か誘うから。」
「じゃあ、麻衣と話しておきます。」
「じゃあ又、連絡する。」
川崎はガッツポーズをしながらスポーツコーナーに向かう。
「最初から莉子狙いなんじゃないかって気付いてたんだよねー。
目がね、もう莉子しか見てない!」と麻衣。
「ほんと?川崎さん?」
「言いつけちゃおうっかな。
莉子って寝る前に、ブラジャー床にほっぽり投げて寝てるんですよ。」
「ちょっと待って!あれは引っ越し祝いでちょっと嬉しくて飲み過ぎた
だけで、いつもじゃないよ。」
「しかも、ストリングスのバイトで会った音楽プロデューサーに
2年以上、憧れつづけて、まる2年以上彼氏がいないんですよって!」
「いやいやいや、本当に許して許して!」
公園でバスケの練習を続ける直輝。
他のチームから良い返事をもらうことが出来ずに落ち込んでいた。
『お疲れ!
今、俺、うちの近くの公園にいるんだけど、夕陽が超綺麗だから
写メするね
今週はずっと忙しいのかな?ひさしぶりにゆっくり会えると
うれしいな
もうナツだし、海に行かない?アークスのみんなでもいいし、
二人でまったりでもいいしさ。あ、でも他の男に菜月の
水着姿を見せたくないな(笑)
あと、母さんが今度、菜月を家に招待したいって
良かったら夕飯でも食べにこない?母さんも夜なら、
お店を早めに閉めて帰ってこれるし
菜月の好きなものを作るよ
優里も菜月に会いたがってるよ
考えといてね
それじゃ、気をつけて帰るんだよ
直輝』
直輝のメールを会社で読む菜月。
「ほんっと文章長い!電話すりゃーいいのに・・。」
そんな中、菜月は上司から、アークスがチームの補強のために
獲得に乗り出していた代々木廉(金子ノブアキ)を紹介される。
「はじめまして!」
「どうも。よろしく。」
代々木の握手に戸惑いながらも応じる菜月。
「わからないことがあったら何でも私に聞いてください。
契約選手の福利厚生は、総務部の私の担当なので。」
「スリーサイズいくつ?」
「・・・ベタな冗談ですね。」
「彼氏いるの
「いますよ。ご心配なく。」
「じゃあ、欲求不満なんだね?」
「・・・」
「そういう顔してるよ。」
「・・・」
偶然中西と再会する莉子。
「白河君!」
「中西先生!」
「へー!綺麗になっていたから、一瞬気付かなかったよ。」
「いえそんな・・どうもお久しぶりです。」
「全然連絡くれないから。」
「連絡できるような活躍、全然出来てなくて。
連絡したいなとはずっと思っていたんですけど。」
「そっか。もったいない。
白河君には、他の人にない魅力がある。
あ、そうだ、これ。
今度、若い女性のクラシカルバンドを作って、CDデビューさせようと !
思っているんだ。僕のプロデュースで。やってみない
「え?オーディションあるんですか!?受けたいです!
是非受けさせて下さい!」
「わかった。」
家に戻った莉子は、張り切って練習をする。
そんな中、またあの音が聞こえてきた。
窓を開けてみるが、誰もいなかった。
「・・気のせいか。」
直輝はチームのロッカールームに行ってみると、みんなが集まっていた。
「何やってるんですか?オフですよ?」
「一週間も休むと身体がなまって気持ち悪いんだよ。」と宇都宮。
「俺も!」と守口。
「直輝さん移籍するんですか?」と秀治。
「今ハーツから連絡待ち。」
「直輝・・そんなこと言わないで一緒に頑張ろうぜ!」と宇都宮。
「でも年俸下がったしなー。」と守口。
「守口さんも?」と直輝。
「俺もです!」と秀治。
「秀治いくら?」と守口。
「300万。」
「酷いなー。」と宇都宮。
「ていうか俺とお前が15万しか変わらないなんて微妙だわ・・。」と直輝。
「松井とかイチローとか、年俸10何億とかもらってるんですよ。
同じスポーツ選手なのに、この違い何なんですか!
ケタが二つも違うんですよ。」と秀治。
「お前と松井は違って当たり前だろ!
しかもお前はケタ3桁だからな。」と宇都宮。
「そうだよ、お前はまだマシだよ。
俺なんて嫁と子供がいるんだぞ。」と守口。
「俺とお前が15万って・・。こんなプヨプヨの筋肉にな。」と直輝。
「プヨプヨってことないでしょう、ほらほら!」
筋肉自慢を始める4人。
そこへ川崎がやって来た。
「終わった?みんなちょっといいか?」 ]
川崎は4人を練習場に連れていく。
そこでは代々木が施設の見学がてら練習をしていた。
「前、インカレでやったことあるよね?」直輝が代々木に声を掛ける。
「あー。あのインカレで得点王もらってた一年か。
なんか・・オーラ消えてて気付かなかった。」
「・・・」
「あのー、自己紹介とかいいんで、誰か1オン1付き合ってもらえます?
その方がお互いのことわかるでしょ?
廉から挑発された直輝は、彼と1オン1の勝負をする。
が、結果は廉の勝ちだった。
「お前さ、そんなんで大丈夫なの?
プロになったらさ、もう根拠ねー自信だけじゃやっていけないよ?」
廉の言葉に直輝は返す言葉が見つからず・・。
「俺もう少し考えますわ。
他のチームからもオファーが来てるんで。」
廉はそう告げ帰っていく。
「待ってください!代々木さん!」
その後を菜月は追い・・。
「入れば、即戦力にはなりそうですね。」宇都宮が川崎に言う。
「うーん、でもま、協調性の問題がありそうだ。」と川崎。
莉子はオーディションを受けるために、中西のスタジオを訪れる。
「どうぞ。」
「あ・・はい。」
「白河君は、モーツァルトが好きだったね。」
「はい。」
「モーツァルトは恋多き男性だ。君もそうなの?」
「あ・・いえ、私は、一人の男性をひたすら、思い続けるタイプというか・・。」
「もしかして、僕の事ずっと思ってくれてた?」
「・・・」
「僕の勘違いかな。」
「あ・・いえ、でも、今はバイオリンで認めていただきたくて。」
「バイオリンはいいから、脱いでみて。」
「・・・え?」
「演奏はいいから、脱いで。」
「あ・・はい?えっと・・」
「いいよいいよ、手伝おう。」
「いや!触らないで!」
「大丈夫だよ。」
「ざけんな!!」
思わず中西の頬を叩く莉子。
「あ・・すみません、私・・。
でも、何で?
だって、私、今日、先生にバイオリンを聴いていただきに・・」
「バイオリン?
言っただろ。君には他の人にはない魅力がある。
君の魅力は、見かけだ。」
「・・・」
「見かけだよ。君の魅力は、見かけだ。」
「・・・」
「実力も無いくせに、プライドだけは高いその高慢ちきな顔。
たまらないよ。
幸いこのカルチェットは、見かけ重視。
君程度の演奏も、僕のテクニックでどうにでも出来る。
だから露出して、アピールしてみろと言ったんだ。
どうだ?ほら早く脱いでみろよ。」
怒って立ち去る莉子。
「いいのか?後悔するぞ!」
「・・・」
「二流音大を辛うじて卒業した程度の実力じゃ、
音楽の世界で普通に食べていけるなんて、
本気で思ってたのか?」
「・・・」
アルバイト先の書店に泣きながら戻る莉子。
「莉子・・オーディションどうだった?」と麻衣。
「私・・本屋さんになる。」
「は?」
「立派にバイトして、正社員になって、音楽なんて・・音楽なんてもう・・」
「どうしたの莉子・・」
「憧れてたのにー。弾かせてももらえなかったよ、悔しい!」
「泣かないでよ・・。
川崎さん来てるよ。」
「・・・」
「あなたに会いに。」
「やだよ、こんな顔じゃ会えない・・メイクが・・」
「ほんとだ。酷い顔だね。記念に撮っておこう。」
麻衣が携帯カメラを向けると莉子は反射的にピースサイン!
「ロッカー行ってメイク直しておいで。」
気を取り直して川崎の元に行く莉子。
「おぉ!」
「あ、面白いですよね、この本。」
「まあまあね。あ、犯人言わないでよ。ちゃんと買って帰るから。」
「オーディションどうだった?」
「ああ・・あれ・・ダメでした。
私が思っていた音楽性とちょっと方向が違ったっていうか・・」
「芸術の世界も色々あるんだな。」
「なんて。本当は私に実力がないだけなんですよね。
わかっているんです、私。自分がダメだって。
ダメなくせに、プライドばかり高くて。」
「最近、同じような事言ってるやつがいたなー。」
「え?」
「いいんじゃない?
現実の自分と、理想の自分とのギャップに苦しむのも、
若者の特権で。」
川崎の言葉に微笑む莉子。
「でもま、人生の先輩としては、あまり悩みこむより、もっと前向きに
人生を楽しむことを勧めたいな。
莉子ちゃんの分と、麻衣ちゃんの分。
もしよければ、それと、俺の仲間も一緒に。いいかな?」
川崎はそう言いライブのチケットを渡す。
「はい!ありがとうございます!」
帰り道、麻衣と並んで歩く莉子。
「麻衣、私ね、あんなことに負けないで、バイオリン頑張る。
もっと、前向きに!」
「そう!前向きでいかないとね!」
「うん。」
「川崎さんどんな男連れてきてくれるんだろうねー。」
「うん、いい人だよね、川崎さんって。」
「うん。」
「あれ?麻衣、携帯鳴ってない?」
「え?私?」
「あ、ごめん。向こうの人だった。」
自転車から降りて携帯に出る直輝。
ここでも直輝と莉子、ニアミスです。
「どうした?菜月。」
「今ね、部長と宇都さんたちと一緒に代々木さんと飲みに来てるの。
部長がどうしても代々木さんをうちに引っ張りたいみたいで。
今から川崎さんも来るっていうし、直輝も来ない?」
「どうして俺があんなヤツの為に行かなきゃいけないんだよ。」
「・・・もしもし?」
「もしもし?俺、今日、やめとくわ。
ハーツから連絡あるかもしれないしさ。」
「あ・・そっか。」
「じゃあ、帰ったら電話してよね。」
「うん。
でもさ、来たほうがいいんじゃない?」
「何で?」
「だって・・もしかしたらこのまま、移籍先決まらないかも
しれないでしょ?
部長にお願いして、315万でもいいから、もう一年頑張りますって
言った方が・・」
「何だよそれ・・」
「プライド傷つけたなら、ごめん。 j
でも私、今・・直輝はうちのチームで頑張ったほうがいいと思う。
ほら、その方が私も寂しくないし。」
「とにかく、今日は俺行かないから。」
直輝はそう言い電話を切ってしまう。
「チッ。ヘタレが」菜月はそう呟き席に戻る。
上矢家
「ただいま。」
「お帰り!何か食べる?」
「ううん、大丈夫。」
部屋で考え込む直輝。
その晩、直輝のもとに他チームからの連絡はなかった。
「直輝ー!!ちょっとー!!」母の叫び声。
「何?」
「ちょっとちょっと!英語しか出なくなっちゃったー!ほらー!」
「大丈夫だよ。はい。
こうしたら又英語になっちゃうからね。」
母親が使っていたパソコンを直す直輝。
「OK!やっぱり頼りになるわね、直輝がいる。
よし、もう一仕事。コーヒー入れよう。飲む?」
「いらない。
あのさー、」
「うん。」
「俺って本当に頼りになるのかな。」
「うーーーん、そうねー。ならないかも。」
「今なるって言ったじゃん。」
「冗談よ。
私が離婚して、女手一つになってから、どれだけあなたを頼りに
してきたと思ってんの?」
「・・・」
「よーし。思い切り濃いの飲んで頑張ろう!」
直輝の部屋
直輝は婚約指輪を見つめ・・
自転車で菜月たちがいる店へと急ぐ直輝。
同じころ、菜月は、明日は朝から出張だから、と言って先に店を出ていた。
夜道を一人歩きながら携帯で直輝に連絡する菜月。
「チッ。出ろよ!」
ベンチに腰掛け、タバコを吸っていると廉がやって来た。
「こんなところ一人でいたら襲われちゃうよ。」
「・・・」
「んなことはないか。
君って結構周りが思っているより悪い子だったりしてね。」
「だったらどうなのよ。
悪い子だったら、どうなの?」
「・・・」
「良く知らない男に、文句言われる筋合いないんだけど。」
「いいや。だったら俺と気があうかも。」
菜月を抱き寄せ強引にキスをする廉。
菜月もそれを受け入れ・・。
そんな二人に気付かずに通り過ぎていく直輝。
店に到着した直輝は、菜月が先に帰ったことを知る。
そこで直輝は、もう1年アークスでやらせてほしい、と足利に頭を下げた。
部長も川崎たちも直輝を歓迎する。
店を出た直輝は、いつも練習をしている公園に立ち寄る。
公園では莉子がバイオリンの練習をしていた。
しばらく演奏を聴いていた直輝は、莉子が弾き終えると拍手をした。
直輝がバスケットボールを持っていることに気付く莉子。
「あ・・ごめんなさい、気付かなくて。」
「ああ・・全然。」
「いつも狭いところでしか練習できないから、なんか広いところで
弾いてみたくなっちゃって。」
「そうなんだ。どうぞ。」
「いえ、もう終わりにしようと思ってたんで。どうぞ。」
さっそくシュートの練習を始める直輝。
そのドリブルの音こそ、莉子がいまの部屋に引っ越して以来、
ずっと気になっていた「C=ド」の音だった。 ,
目を閉じてその音の聞き入る莉子。
「ドの音!」
そう呟き目を開ける。
その時、華麗なシュートを決める直輝の姿が目に飛び込む。
「すごい!」
次々とシュートを決めていく直輝。
「すごいキレイ!」
「・・・」
「すごく上手いんですね! `
綺麗なフォームで、綺麗なリズムで。
私、男の人見て綺麗だと思ったの初めて!
なんか尊敬しちゃった。」
お辞儀をして答える直輝。
「あら?どっかで会った事あります?」
「・・・いや。」
「あ・・そうですか。
あ、ごめんなさい。素人が生意気に。」
「いえ。」
「どうも、お邪魔しました。」
帰ろうとする莉子に、直輝が声を掛ける。
「あの・・」
「はい。」
「ありがとうございました。」
「??」
「すっげー嬉しかった!
俺のバスケ褒めてくれて。'
・・嬉しいというか・・嬉しかった!ありがとう!」
「どういたしまして。
私も嬉しかった。」
「え?」
「さっきの拍手。
ね、バスケットボールの選手なんですか?」
「まあ一応。
でも全然ダメですよ。ギャラ少ないし、ファンとかもいないし。」
「そうなんですか?」
「・・・上手くいかないことばっかだし。」
「そっかー。
・・・」
自分のことを重ねて落ち込む莉子。
そんなお互いの様子に笑い出す二人。
「なんか、笑えますよね。」と直輝。
莉子が直輝に歩み寄る。
「まあ・・色々あるけどさ。」
直輝の肩に手を置く莉子。
「頑張ろうよ!」
莉子に励まされて頷く直輝。
「私が・・あなたの最初のファンになってあげる!」
そう言い笑顔で帰っていく莉子。
「・・・何だよファンって・・。」
直輝はそう言いながらも微笑み・・。
莉子が部屋に戻ると、麻衣はお肌の手入れをしていた。
「ただいまー。」
「おかえり!・・莉子、まさかすっぴんで外に出かけたの?」
「うん。そうだけど。」
「夜の外気は肌に悪いの!」
「あ、そういえば私、ノーメイクで男の人と喋っちゃった。
アハハ。」
早朝、並んでランニングする川崎と宇都宮。
「久しぶりに体重計に乗ったら、体脂肪が二桁になっちゃってさ。
辞めて2年経ったからって、身体まで引退するわけにいかないだろ?」
「もっと川崎さんと一緒にプレイしたかったな。」
「ウツ、お前来週あいてる?」
「もしかして又女ですか?」
「俺もう32だよ。今度は本気!
今度こそ、本気でゴール決めるぜ!」
ホテル
服に着替えたあと、カーテンを少しあける菜月。
ベッドで眠る廉に声を掛けずに部屋を出ていこうとすると、
「カーテン閉めて。」廉は目を閉じたまま呟く。
朝、莉子は、例のドリブルの音で目を覚ます。
窓の外から公園をのぞくと、直輝がもくもくとシュート練習をしていて…。
'
第2話からレビューを始めたブザービート、第1話を今頃アップ(笑)。
バスケのシーン、チアのシーン、バイオリンのシーン、
見せどころ満載なドラマです。
でも、みんな一生懸命練習したのだろうけれど、
カメラワークでごまかしているような気がしちゃいました。
一番良かったのはブラックな相武さん!
可愛い顔して舌打ちしたり、タバコぷかぷか。
彼女の存在が一番気になります!
麻衣、莉子、直輝、秀治。
初回でバスに乗り合わせた4人が、最終的にはカップルになるのかな?
恋人・菜月の本当の気持ちに気付かない直輝と、
憧れの音楽家(鈴木一真)に傷付けられた莉子。
莉子に惹かれる川崎コーチ。
菜月の欲求不満を見抜き、ちょっかいを出す廉。
B’zの主題歌のイントロがわくわくさせてくれます。
「あなたは私のほんの一部しか知らない」
菜月の心境がピッタリな歌詞!
他の登場人物にも今後シンクロしてくるのでしょうか。
初回では、気軽に楽しめる作品かな、と思っていましたが、
第4話まで見続けてきて、ちょっとドキドキしてきました。(笑)
第二回
『夏の恋が始まる!!』
上矢直輝(山下智久)と白河莉子(北川景子)は、互いの名前も
知らぬまま、親しく話すようになる。
直輝がシュートの練習をするために使っている公園で、
莉子がバイオリンの練習をしていたことがきっかけだった。
莉子は、その公園のすぐそばにあるアパートで、
親友の海老名麻衣(貫地谷しほり)とルームシェアを始めたばかりだった。
まだお互いの名前も知らない間柄なのに、
お互い、バスケ、バイオリンを習い始めたきっかけを語り合う二人。
莉子は直輝が相手だと素直に何でも話せるようです。
ある夜、直輝の家に、恋人の七海菜月(相武紗季)が遊びにくる。
直輝の母・真希子(真矢みき)や妹の優里(大政絢)は、
いつものように大喜びで菜月を出迎えた。
菜月を迎える準備に張り切る真希子と優里が
可愛らしい。
菜月はみんなの前ではとても礼儀正しく、気配り上手。直輝たちが皆で食事をしていると、菜月の携帯電話に着信があった。
電話をかけてきた相手は、直輝のチームメートになった
代々木廉(金子ノブアキ)だった。
友達と嘘をつき無視しようとする菜月だが、直輝たちに出るよう言われ
席を外して電話に出る。
「もしもし。」
「あー、俺俺!今どこにいるの?」
「今?彼氏の家。」
「あー、そう。いい休日だね。」
「そう。いい休日なの。
だから・・・ '
一回寝たくらいで、勘違いしないでくれる?」
菜月はそう言い、電話を切ってしまう。
同じころ、莉子と麻衣は、直輝が所属するJCアークスの
ヘッドコーチ・川崎智哉(伊藤英明)に誘われて、飲みに出かける。
その席に川崎が連れてきたのは、アークスのキャプテンを務める
宇都宮透(永井大)だった。
川崎が莉子に興味を持っていることを知っている麻衣は、
ひと目で宇都宮のことが気に入っていた。
だが、莉子が川崎から聞いた話によれば、宇都宮にはあるウワサが
あるのだという。それを知った麻衣は…。
「男の人が、好きな人かも。」
莉子の言葉に戸惑いながらも、宇都宮にうっとりな麻衣!
宇都宮が有能な選手と知り、ますます夢中に。
川崎も選手時代は宇都宮以上に優秀。
ひざの故障が原因で、選手生命が絶たれたようです。
「今更だけど、莉子ちゃんは彼氏とかいるの?」と川崎。
「え?」
「どっちでもいい。
いないならいないでラッキーだし、
いたらいたで、かえって燃える。」
「いません。」
「そう。じゃあラッキーだ!」
「・・・」
莉子は川崎のペースに巻き込まれていくようです。
菜月を見送る直輝。
家まで送ろうとするが、
「大丈夫。駅まで近いし。
お母さん手伝ってあげて。片付けまだだったでしょう?」
と菜月が気遣う。
「うん。じゃあ・・」
お休みのキスをする直輝。
「・・・ね・・・もう一回して。」
「・・うん。」
直輝はもう一度軽くキス。
「・・・」
「うん?」
「うん?・・ううん。おやすみ。」
「おやすみ。」
直輝と別れたあと、一服する菜月。
その側を、莉子と麻衣が通り過ぎていく。
「ああいう大人の男性のデートって、何かいいよねー。
学生ん時と全然違うっていうか。」と莉子。
「私も思った!学生の時の彼みたいにさー、これからどうする?とか、
お前何食べる?お前決めてよ、みたいな
そういうんじゃなくてさ。
こっちが何もしなくても自然とエスコートしてくれるみたいなさ!」
「そうそう!道歩いている時も、自然と車道側にすすっと出てくれる
みたいな!」
「それすっごいいい!女の子として大事に扱われてるって感じするもん!
やっぱ時代は年上だね!」
「でもだから余計に相手のペースに流されてるっていうかさー、
本当はすっごい悪い男だったりして!」
「あー。肩凝った!」
タバコを吸い終えた菜月が呟く。
いい子を演じるのは疲れる・・ということでしょうか。
前回、彼女の別の顔にびっくりさせられましたが、
直輝のことを好きだからこそ、いい子を演じてしまっている。
自分のことを大切にしすぎる直輝のことがじれったくて、
その反動があんな行動に出てしまっているのかな。
代々木とホテルに泊まった日のことを必死に言い訳するところを見ると、
直輝のことを愛する気持ちには嘘はなさそう。
そんな風に思ったら、彼女の事も好きになってきました。
風呂に入っていた直輝は、水にぬれないようビニール袋に包んだ携帯に
菜月からのメールが入り、一安心。 ,
『今家に着きました。
今日はごちそうさま』
「その夜、久しぶりに子供の頃を思い出した。
(試合でゴールを決める直輝)
あの日から夢中でバスケを続けてきたけど、
俺はいつまで、この夢を見続けられるんだろう。」
直輝たちアークスの面々は次のシーズンに向けて動き出す。 ]
来週から再開される練習の前に、選手紹介用の写真撮影などをこなした
直輝は、秦野秀治(溝端淳平)、守口修斗(青木崇高)らとともに
子どもバスケット教室にも出向き、小学生たちを指導する。
直輝は、子どもたちから大人気だった。
「上矢選手はどうしてバスケットの選手になろうと思ったんですか?」
子供からの突然の質問に、直輝は答える。
「・・・あ、俺も、バスケを始めたのは、丁度みんなと同い年位の時で。
小学校5年の試合のときに、試合の最後の最後にブザービートを決めて。」
「ブザービートって何ですか?」
「ブザービートっていうのは、試合の最後のブザーが鳴った直前に
放ったボールが、ゴールに入ること。
そういうシュートのことを、ブザービートって言います。
その試合は、1点差で負けてたんだけど、
そのシュートを決めて、逆転優勝した時に思ったんだ。
試合は、最後の最後の1秒まで、絶対に諦めちゃいけないって。
それでその時に、絶対プロになってやるって、決心しました。」
この時の菜月の微笑みに嘘はないように思いました。
彼女はやっぱり直輝のことが好きなようです。
一方、莉子は、川崎に誘われ、初めてふたりだけで会うことに。
川崎が連れていった場所は、バスケチーム行きつけのカフェバー。
「なんか今日、警戒してる?」
「いいえ・・でも、突然だったからちょっと、緊張はしてるかも。」
「大丈夫だよ。初めてのデートで突然キスしたりしないから。」
「そんなこと思ってませんよ。」
店主は川崎の大学時代の後輩で、元バスケ部。
「そんなに上手くて止めちゃうなんて・・」と莉子。
「バスケは日本ではマイナーだし、実際好きなことやって食べていくのは
大変だからね。」
「ま、確かに・・。」
「今度ナオが来たらハッパ掛けてやってよ。
あいつスランプ脱してないんだよ。」
「了解です!」と店主。
その頃、直輝は菜月の家でゲームをして遊んでいた。
「・・・」
「・・・」
「俺、そろそろ帰るわ。」
「え?どうして?」
「最近さ、朝500、夜500で、シュート練習してるんだ。」
「そうか。真面目だね、直輝は。」
「今シーズンこそ、いいとこ見せないとね。」
「・・・」
直輝が帰ると菜月は切ない表情を浮かべていました。
夜道を歩く莉子と川崎。
莉子の指には絆創膏。川崎のジャケットの取れかけたボタンに気付いた莉子は、
直してあげた際、指を針で刺してしまったのだ。
「驚いたよ。振り向いたら血出してたから。」
「そういえば私、小学校の時から家庭科苦手だったんです。
指怪我するといけないからって、ドッチボールとかバスケットとか
そういうのも全然やってなかったし。」「バイオリン、大丈夫?」
「右手だから大丈夫!
でも、ボタンはすぐ取れそう。
取れたら次はちゃんとつけますから。」
「大丈夫だよ。ありがとう!」
「あ、川崎さん、この辺で大丈夫です。
今日は、ありがとうございました。」
「なんかさ、川崎さんって言われるたびに、会社の人間に会っている
みたいで、背筋が伸びちゃう。」
「そうなんですか?」
「嫌だな、川崎さんは。」 l
「じゃあ・・なんて呼べば?」
「なら・・智哉で。」
「智哉・・さん。」
「お、いいね!」
「なんか恥ずかしいですよ。」
「何回も言ってれば慣れるって。」
「うーん、智哉さん・・智哉さん・・智哉さん・・
智哉って名前母音に"お"が多いかも、」
川崎が莉子にキスをする。
「・・・嘘つきなの?」
「時々ね。」
「・・・」
「じゃあもう嘘はつかない。
初めて会った日、空に花火が上がった瞬間、
あー、人はこういうのを運命って言うのかなって、
そう思った。」
莉子の手を取る川崎。
「本気で言ってる。
好きだよ、莉子ちゃんのこと。」
「・・・」
川崎はもう一度莉子にキスをし・・。
ニタニタ笑いながら帰宅する莉子。
「ただいまー!」
「おかえりー!」
「エヘヘヘヘ・・・・」
「何あれ・・。」
「キスされちゃったー!しかも上手い!」
「何の話?」 :]
「恋愛ってこんな簡単に進んでいいもの!?」
「何!?進んだの!?川崎さん!?」
「うん。」
「何があったのー!?」
「知りたい?言わないー!」
「教えてーー!!」
公園
「今日はいないのか・・。」
直輝はいつものように練習を始め・・。
菜月の家に代々木がやって来る。
「あ、チェーン・・」
「この間のは、遊びだから。」
ドアを閉めようとする菜月。
「性格悪いね。」
「言いふらせば?」
「やめとくよー。お前の彼氏繊細そうだし。」
「・・・」
「あいつだったとはなー。」
「もう帰って!」
閉まりかかるドアに足を挟む代々木。
菜月はその足を踏みつけ、ドアを閉めた。
菜月の携帯が鳴る。
「酷いじゃん。お前がいたからアークスに入ったのにー。」と代々木。
「・・・」
「じゃあこうしようよ。
今度の練習試合で、俺があいつより点数稼いだら、 )kkhJI*v
俺と付き合う。 $9ky{T?YG
あいつの方が点取ったら、今までどおり浮気相手としてお前に尽くす。」
「やるわけないでしょ、そんなガキみたいな賭け。」
菜月はそう言い電話を切る。
大学との練習試合が開かれる。
「お久しぶりです!直輝さんと試合できて嬉しいです!」
後輩が直輝に挨拶をする。
それを聞いていた代々木、
「過去の栄光でも思い出して頑張ってよ。」と嫌味を言う。
川崎は直輝をベンチに呼び・・。
試合が始まる。
直輝はベンチからチームを応援していた。
「直輝がスターターじゃないなんて・・初めて。」
観客席にいる菜月が呟く。
代々木は華麗なボール裁きで次々とシュートを決め、
そのたびに、菜月の方を見る。
代々木の視線に困惑する菜月。
そこへ、莉子と麻衣がやって来た。
「宇都宮さーーん!」麻衣は目じりを下げて応援する。
莉子が直輝に気付く。
「あれ!?
うっそ、あの人だ!
嘘みたい。あの人ここの選手だったんだ!
こんなトコで会うなんて・・。
あの人すっごい上手いんだよ!
何で試合出てないんだろう・・。」
「直輝。
なぜスターターにしなかったかわかるか?」と川崎。
「・・多分。」
「よし、行って来い。」
「はい。」
直輝がゲームに入ると、後輩が言う。
「驚きましたよ、直輝さんがベンチなんて。
プロは厳しいってことですか?」
直輝のシュートがゴールを外れる。
「・・あれ?」と莉子。
宇都宮がシュートを決める。
「知ってる人が強いって楽しいね~!」と麻衣。
「・・うん。」と莉子。
直輝のシュートは外れてばかり。
それだけでなく、チームワークも乱れていき・・。
試合を見つめていた莉子が立ち上がる。
「ちょっと!8番!!何やってんのよ!」
「・・・」
「グズグズ、グズグズ、グズグズ、グズグズ!!
あんた、バカじゃないの!?」
「莉子ちゃん・・」と川崎。
「あんたの実力は、そんなもんじゃないでしょうが!!」
「・・・」
「すみません、試合の邪魔になりますので・・」
菜月の注意にも莉子は止まらない。
「強いのに!才能あるくせに!
何怯えてんのよ!!
悔しかったらここで見せてよ!あなたの実力を!
あんた絶対強いんだから!!」
「・・・」
「強いの!!上手いのよ!!
ちゃんとやんなさいよ、バーーカ!!」
「・・・」
莉子の叫びに吹っ切れたのか、直輝はシュートを見事に決め、
後半は連続でシュートを決め続ける。
「ようやく吹っ切れたか。」と川崎。
直輝のブザービートが決まり、78対63で試合はアークスの勝ち!
「さすが直輝さん!やっぱ叶わないです。
ありがとうございました!」と後輩。
直輝は二階席の菜月にVサインを送ると、辺りを見渡す。
だが、莉子はもういなかった。
莉子を探しに会場の外に出てみると、菜月がやって来た。
「お疲れ様!」
「菜月、あいつ見なかった?」
「え?」
「あの・・怒鳴ってた女。」
「ああ・・試合の途中で帰ったと思うけど。」
「帰ったのかよ・・」
「知り合い?」
「知らないけど、川崎さんの知り合いらしくて。
ちょっと俺探してくるわ。」
「・・・」
一人になった菜月の隣に、代々木がやって来た。
「点は俺の方が取ったよ。」
「・・・」
「でも今日は勝った気しねーから、まあいいわ。」
「勝つって、直輝は同じチームの仲間でしょ。」
「何言ってんだ、偽善者。」
「・・・信じられない!!」
宇都宮との2ショット写真をねだる麻衣。
写真を撮っているのは秦野。
オープニングを見ると、麻衣はこの秦野とカップルになるのかな?
莉子の携帯が鳴る。
「もしもし・・」
「帰っちゃったんだって?」と川崎。
「・・はい。」
「ありがとう、うちの選手を罵倒してくれて。」
「すみませんでした。私・・」
「いや、本音。あれがなかったら本当にやばかった。」
「なんか、悔しくなっちゃって。」
「ね、知り合いだったの?」
「いえ。知り合ってほどじゃないんですけど、
ご近所さんみたいなんです。
時々会った事があって。」
「ふーん。そう。」
「うん。」
莉子のマンション
「・・・なんであんなこと言っちゃったんだろう。」
自己嫌悪に陥る莉子。
その時、バスケットボールの音がしてきた。
窓から覗くと、直輝が練習をしていた。
莉子は部屋を飛び出し・・。
「おーい、そこの人。」と直輝。
「・・・さっきは、怒鳴ってごめんなさい!
でも、私、嘘はいってないから。」
「何で途中で帰ったんだよ。」 .
「・・いや・・周りの目が・・辛くって・・」
「俺の方が辛かったし。」
「そうだよね・・。ごめんなさい。」
「でも・・ありがとう。
まあ感謝するよ。
なんか勇気出たし。
ていうかさ、怒鳴ったなら最後まで見て帰れよ。
せっかくブザービート決めたのにさ!」
「ブザー?」
「うん。まあいいや。」
「ごめん。」
「公式戦始まったら見に来て。」
「公式戦?」
「君が見てると強くなれそうな気がするし。」
その言葉に微笑む莉子。 &>4$ [m>n
「ちゃんとやらないとバカって怒鳴られるし。」
「もう怒鳴りません。
うん。わかった。
応援しに行くね。
私、あなたのファンだもんね!」
「怖いファンだけどね!」
「これもファンの愛情だし。」
公園に子供達がやって来た。
「何してるんですか?」と直輝。
「七夕の飾りを燃やすの!」「花火もやるの!」
二人は子供達が七夕の飾りを燃やし、花火で遊ぶのを
ベンチに腰掛けて見つめ・・。 '
「今日は、バイオリンの練習しないの?」
「あ・・うん。
でもま、明日から又頑張ろうかな。」
「うん。」
「じゃ!
・・・あ、ねえ。
次また怒鳴る時の為に、名前教えてよ。」
「上矢直輝です。」
「カミヤ・・ナオキ。
漢字で書くとどういう字?」
「上下の上に、矢印の矢。」
「なるほど。私は白河莉子。
紅白の白に、サンズイの川。」
「白河さん。」
「年は?」
「24。」
「やっぱ!じゃあ同じ学年だ!」
「丑年?」
「うん! ! `
・・じゃあ、またね!上矢君。」
「じゃあね、白河さん。」
莉子が帰ったあと、直輝はふと、公園の看板を見つめる。
『Love makes me strong』
第1話よりも引き込まれたのでレビューしてみました。
莉子の叫びは、多分、全力を出し切れていない直輝の姿に
自分を重ねてしまったのでしょうね。
打ち上げ花火の夜に莉子に恋に落ちた川崎は、
莉子に名前で呼ぶよう言い、キスをしました。
公園の花火を楽しそうに見つめていた莉子と直輝。
二人はやっと出会い、名前を知り、苗字で呼び合うようになりました。
似たもの同士の二人は、お互い叱咤激励し、良いパートナーと
なるのかな。
同志のような関係に留まるのか?恋に落ちてしまうのか?
北川さんの長い髪が時折山口智子さんと重なります。
思い浮かぶのは、『ロングバケーション』の名シーン!
菜月が直輝に本当の思いをぶつけるシーンを早く見たいです。
第三回
『二人の秘密』
上矢直輝(山下智久)たちJCアークスの面々は、シーズン開幕に向けて
トレーニングを続けていた。
練習試合の最中に、白河莉子(北川景子)から檄を飛ばされた直輝も
必死に練習に打ち込んだ。
ヘッドコーチの川崎智哉(伊藤英明)は、トレーナーの松山亮介(川島章良)とともに、個人練習のメニュー作りに余念がない。
一方、マネージャーの春日部良夫(金田哲)は、予算の削減を受け、
ロッカールームの蛍光灯を減らすなどして経費を切り詰めていた。
キャプテンの宇都宮透(永井大)は、チームが厳しい状況に置かれて
いるいまこそ力を合わせて頑張ろう、とチームメートたちを鼓舞した。
練習を終えた秦野秀治(溝端淳平)は、莉子と海老名麻衣(貫地谷しほり)がアルバイトをしている書店を訪れる。
秀治を呼び出したのは麻衣だった。宇都宮に心をひかれていた麻衣は、
秀治に彼のことを調べさせようとしていた。
一方、菜月(相武紗季)は、新戦力としてアークスに加入した
代々木廉(金子ノブアキ)の態度の変化が気になっていた。
廉が、菜月のことを無視しているように見えたからだった。マンション前のコートから聞こえるバスケットボールの音。
直輝じゃないとわかると、莉子は残念そうに
「今日はいないのか。」と呟きます。
その頃直輝は菜月の家でオムライスを作ってあげていました。
「ねえ直輝。やっぱり・・・結婚しない?」
菜月は自分の心に代々木が入り込むことが怖いんじゃないのかな。
そんな菜月に対して、直輝は
「ごめん。今は無理。
俺もしたいよ。
でも、自分に自信がない。
金の事もそうだし、選手としてのキャリアも。
だからもっと強くなって、ちゃんと菜月を幸せに出来るって、
そういう自信が付くまで・・もうちょっと、待って欲しい。」と返事。
「うん・・わかった。
そうだよね!わかった、OK!」
明るく答える菜月が健気に思えてきました。
「こんな俺で、ごめんね。」菜月を抱きしめる直輝。
「ううん、いいよ。」
菜月は直輝に手を回しますが、でもその表情は冷めているようにも
見えて・・。
この時のBGMが、莉子が奏でるバイオリンの音色。
翌日、気合を入れて練習をする直輝に川崎コーチは
ヒザに負担が掛かることを心配し、
「焦るな。」と声をかけます。
アパートが見つからずに途方にくれる秀治。
「こういう時に養ってくれる年上の彼女がいればいいんですけどね。」
「は?俺絶対そういうの嫌だわ。」と直輝。
「バカだな、秀治は。
女は男が幸せにしてやるもんだろ。」と川崎。
「俺も断然そっち派です。」と直輝。
「宇都さんはどうですか?」と秀治。
「俺は今はシーズンのことで頭がいっぱいで、
女のことなんか考えている暇がないってとこかな。」
秀治と麻衣は上手くいきそう!?
直輝と川崎の恋愛論は似ていそう。
宇都宮さんは・・謎!!
代々木は直輝を見てる見てる!
麻衣に手を出したのは直輝への対抗意識だけなのか?
練習を終えて帰宅した直輝は、母親の真希子(真矢みき)に、
結婚して家を出た姉の部屋を秀治に貸してもいいか相談する。
秀治は、間もなくアパートを追い出されてしまうが、
まだ引っ越し先が決まっていないのだという。
真希子は、高校生の次女・優里(大政絢)がいることもあって
一瞬考えるが、秀治ならいいだろう、と言ってそれを許可した。
そんなある日、菜月と食事をする約束をした直輝は、
スーパーマーケットまで買いだしに行く。
直輝は麻衣の家で食事を作るために買物に来たのだが、
デートがキャンセルになり、食材を戻していく。
「ふーん。彼女いたんだ・・。」莉子は呟く。
公園に立ち寄った莉子と直輝は一緒にビールを飲み始める。
「私ね、夏のイメージって、爽やかっていうよりも、
荒々しくて怖いっていうイメージなんだ。」
「怖い?」
「うん。子供の頃に聞いた、リバルディの夏っていう曲の
イメージなんだけど。
夏の空に雷が鳴って、その時に雹が負って。
バイオリンの音がこう、キュキュキュキュって。」
「うーん、怖い夏ってイメージ出来ないな。」
「あ!今持ってるよ、聞く?」
莉子のイヤホンを耳に当てる直輝。
「これ何の音?」
イヤホンの片方を莉子に渡す。
「あ、これがバイオリンの音なんだよ。」
「へー、こんな音出るんだ、バイオリンって。」
「そうそうそう!カッコイイでしょ?」
「うん。かっこいい!」
二人の顔は急接近!
莉子は慌てて離れます。
「飲みっぷりいいね!」
「よく言われる。
でも安心して。酔ったりしないから。」
「え?」
「酔って迷惑掛ける女って嫌じゃない? J
例えば、男の人に甘えたりだとか。
私はそういう女になりたくないんだよなー。」
莉子はそう言いながらもう一本を開ける。
「酒強いんだ。」
「うん。
ねー、彼女ってどんな人?」
「うーーーん。
すっげーいい女。
いい女過ぎてこっちが焦るよ。
付き合って2年になるんだけど、彼女は、キャリアアップっていうか、
OLとしてちゃんとやっているんだけど、
俺は・・2年前から成長してないっていうか。」
「ふーん、そうなんだ。」
「劣等感だね。男として情けない。」
「そうかなー。
きっと幸せだって思うな。上矢君の彼女は。」
「そう思う?」
「うん。もちろん。
だってそんなに真剣に彼女の事考えてて、
料理も作ってくれて、
うん。十分幸せだよ。」
「そっか!」
「ま、ダメなところもありそうだけど。」
「ま・・彼女の事、早く安心させてやりたいんだよな。」
「ふーん。
・・・あれ。何か今・・胸がザワっときた。酔ったのかな・・。」
その時、公園に粗大ゴミを不法投棄していく若者達が!
「ちょっと!そこの人!何やってんのよ!」と莉子。
「関係ねーだろ!」
「片付けなさいよ!不法投棄でしょ!
警察に連絡するわよ!」
莉子は逃げようとする男達を追いかける。
「あぶないから!やめよう!」と直輝。
「だって!あんな所にゴミがあったら上矢君がバスケの練習
出来ないじゃない!!」
莉子はそう言い、男達の車を追いかけ始める。
直輝も携帯で連絡を取りながら莉子を追い・・。
直輝の練習する場所が奪われたと
莉子は怒っているわけですね。
直輝は警察に連絡していたようで、犯人は無事に逮捕されます。
警察の帰り道。
「・・・なんか・・気持ち悪い!」
「どうして・・」 ]
「すきっ腹で・・飲んで・・走ったから・・うっ!」
「え!?そんなに!?」
具合の悪くなってしまった莉子を直輝は背負って送り届ける。
散らかった部屋に唖然とする直輝。
莉子をソファーに寝かせ、毛布を掛けてあげると、
部屋を片付け、フレンチトーストを作って帰る。
翌朝、泊りがけの練習から戻った麻衣は、部屋が片付けられていて
びっくり!
「わかった!小人さんよ
きっと魔法の国の小人さんが、莉子が寝ている間に
綺麗にすっかり片付けてくれたのね!
・・んなわけないでしょ。莉子がこんなに片付け上手なわけないし。
どうして・・。
まさか不審者!?神経質な下着泥棒か?
盗んだ代わりに片付けてってくれたとか?
え!?莉子何もされてない?
怖い、女の二人暮しって怖い!」
「・・・うわ!思い出した!!」
「泥棒さんがフレンチトースト作ってくれたの?」
「思い出したくなかった・・。」
「何があったの?これ食べていい?」
「・・・恥ずかしすぎる!」
上矢家に秀治が引っ越してくる。
が!
上矢家の長女・ユキノが夫とケンカをし帰ってきてしまう。
・・・秀治の引越し話はなかったことになってしまった。
姉にリクエストされてフレンチトーストを作る直輝。
「あの子食べたのかな。」とふと呟く。
公園に不法投棄された粗大ゴミがやっと撤去される。
偶然その場に居合わせた直輝は、携帯カメラでその様子を撮影。
莉子にメールを送ろうとするが、
「あ・・。俺アドレス知らないんだ。」
麻衣のコンサートに川崎は花束を抱え、チームのメンバーを連れて
駆けつける。
その帰り、川崎はみんなを行き着けのバーに連れていく。
トイレから出てきた直輝に声を掛ける莉子。
「あのさ・・この間は、ほんとごめん!
お礼言いたかったんだけど、連絡先わからなくて。」
「ああ。俺も。
ゴミ撤去されてたよ。」
「うん。私も見た。ほんとゴメン。酔っ払って。」
「ううん。」
「私・・さ、なんか変なことしなかった?」
「あ・・苦しいからブラ外してって言ってたよ。」
「あ・・女として終わってる・・。」
「どうかした?」と川崎。
「あ・・いえ。」
莉子は直輝に言わないで、とジェスチャーし、席に戻る。
川崎はチームのメンバーに莉子を自分の彼女と紹介する。
「あの、みなさん、この間は試合中にご迷惑お掛けして、
すみませんでした。」と莉子。
「俺、あんなデカイ声で怒鳴っている女の人、
初めて見ました。
でも川崎さんの彼女なら納得ですよね。」と秀治。
「まさに熱いもの同志!」
「確かに。」と直輝。
そこへ、代々木と会社の女の子達がやって来た。
「お疲れ様です。」菜月が挨拶に来る。
トイレから出てきた菜月と代々木がすれ違う。
「ねえ!
いつもそうやって私を見るの、止めてくれる?
迷惑!目障りなの!」と菜月。
「見てるのはお前だろ?」
「・・・」
「俺の目はコートではボールを追ってて、
コートの外では女を追ってる。
そういう風に出来てんの。
女なら誰でも見てるし、お前一人なんか全然見てねー。
自意識過剰。
自分が可愛いとか思ってんだろ?
そうでもねーよ。」
「・・・」
「目が合うのは、お前が俺を見てるから。でしょ?
認めるならキスしてあげてもいいよ。
いつも安全な男じゃ退屈だろ?」
「・・・」
怒って立ち去る菜月・・。
菜月は直輝の所へやって来る。
「ごめん、私帰る。」
「何で?」
「朝から体調悪くって・・。」
「俺、送っていきます。」
菜月と直輝が帰っていく。
「ほんと仲いいよなー、あの二人。」と秀治。
「ほんと羨ましいよ。
付き合って2年以上経っているのに全然倦怠期とかないらしいよ。」と店長。
「ね!選手の女だって言ったでしょ。
そういうタイプの女だと思ったんだよね。」と麻衣。
「うん。
あの人が彼女なのか・・。」と莉子。
莉子を送る川崎。
「もう一軒どっか行く?」
「あー、いえ、今日は帰ります。
生ゴミ、ベランダに出しっぱなしだったから。」
「・・・そう。 j
もしかして、迷惑だったのかな。
俺が、莉子ちゃんのこと彼女だって紹介したこと。」
「いえ、そういうわけじゃ。
でも・・スピードが・・。」
「スピード?」
「いえ・・。
私、二股掛けられたことあるんです。
高校の時と、大学のときと、二回も。」
「二股・・」
「2年間憧れていた人には、バイオリンはいいから脱げ、とか言われて。
だから・・だから、男の人のこと、そんなにすぐに信用出来ないのかも。」
「・・・」
「あ、川崎さんのこと信用してないわけじゃないんです、全然。
川崎さんは・・じゃない、智哉さんは、優しいし、大人だし、
カッコいいし。
だから、もう少し、ゆっくり進んでもいいですか?」
「・・・いいよ
こっちこそ、ごめん。
俺はどっちかっていうと、ちょっとせっかちな所があるから。」
「いえ、そんなことは・・」
「現役時代も、即効が得意だった。」
「そうなんですか?」
「そうだよ。
うん。そうだな。
少しずつ俺の事を知って、少しずつ、俺の事を好きになってほしい。」
「はい。」
「で、いつか、莉子ちゃんがコンサートする日には、
今日よりももっとでっかい花束、持っていくよ。」
嬉しそうに微笑む莉子。
「じゃあ、今日は、ここまで。」
川崎はそう言うと、莉子の頬にキス。
「お休み。」
「おやすみなさい。」 :
一度背を向けた川崎は、振り返り、莉子が帰っていくのを見つめ・・。
川崎の言葉を思いながら微笑みを浮かべて歩く莉子。
ふと、公園の前で足を止め、バスケットのゴールを見つめると、
迷いを振り切るように又歩き出す。
菜月の家でおかゆを作る直輝。
「直輝、大丈夫だよ。
ちょっと気分が悪かっただけだから。」
「ダメだって。疲れてるんだって。
最近残業ばっかだったし。」
「・・本当は行きたくなかっただけなの。
でも、みんな行くのにリーダーの私が行かないわけにいかなくて。」
「うん、わかるよ。」
「・・・」
直輝にそっと抱きつく菜月。
「どうした?」
「おかゆはいいから・・一緒に寝て・・ね!」
「ダメだって。 ]
ゆっくり休まないと。
食欲なくても、ちゃんと食べないと、元気でないよ。」
「・・・違う。」
「うん?」
「大事にしてくれて嬉しいよ。
でも・・私が欲しいのはこういうことじゃないの。」
「・・・」
「ねえ、もっとドキドキさせてよ!
もっと夢中になりたいの!
ほかの事、何も考えられなくなるぐらい、
他のものに目がいかなくなるぐらい・・・
もっと、直輝を好きでいたいの。」
「・・・好きでいたいって・・好きじゃないの?」
「・・好きだよ。」
菜月はそう言いキスしようとするが、直輝はそれを避けてしまう。
「どういう意味?」
「・・・」
「何だよそのため息。」
「ため息なんかついてない。」
「・・・俺が結婚できないって言ったから怒ってんの?」
「違う。
・・・でも直輝ってさ、いつになったら自分に自信が持てるように
なるの?」
「・・・」
「それって来年?再来年?
10年後?20年後?
それとも・・このまま一生持てなかったりして。」
「何だよ、それ。」
「だってどこにもないじゃない!
直輝が一流になる保証なんて。
もっと強くなりたい強くなりたいって、
強く願ってればいつかはその夢が叶うはずなんて!
まさか本気で思っているわけじゃないよね?
子供じゃあるまいし!」
「・・・」
「ねえ、もっと現実と向き合ってよ!
もっと大人になって!
そのチンケなプライドに付き合わされるこっちの身にもなってよ!」
「・・わかったわかった、もういいよ。」 `
「・・ごめん!」
直輝は帰ってしまう。
翌日、川崎はみんなを海に誘う。
「誘ってくれて、ありがとうございました。
ちょっと色々あって、頭の中混乱してたんですけど、
ちょっとすっきりしました。」と直輝。
「俺もだよ。
女のことで悩むのは性に合わない。」
「珍しいですね。川崎さんが女で悩んでるなんて。」と宇都宮。
「悩むよ。やっぱりさ、真剣に付き合おうと思う女には、
それなりに悩むよ。」
「おへそ天国だぜ!」と秀治。
「見て!腹筋天国よ!」と麻衣。
秀治から宇都宮情報を聞き出す麻衣。
「そう、今は女のことを考える余裕はないって言ったのね?」
「はい。なんか今は、男といる方が楽しいみたいですよ。」
「・・・やっぱりそっち!?」
「いや僕も、もっとバスケのことで悩みたいんですけど、
今は家がないことの方が深刻で。」
「うち住む?」
「え!?」
「え・・何言ってんの?」と莉子。
「あの何度があるでしょ?
メロディーちゃんよりも、番犬にしちゃ逞しいし丁度いいんじゃない?」
「でも・・男の人と一緒に住むなんてさ、」
「私ね、実は純情なの。
男兄弟はいないし、この間なんかディズニーランドに行った時、
ドナルドダックに肩を抱かれただけでドキドキしちゃったけど、
でも大丈夫。秀治君には何も感じない。」
「僕も何も感じません。」
「失礼な!」
「でもやっぱりさ・・」と莉子。
「いいじゃない。宇都宮さんのことも川崎さんのことも
いろんなこと教えてくれるかもしれないでしょ!」
「でも、」
「何が問題なの?」
「部屋で、ノーブラで過ごせないでしょ・・」
「付けて、夜は。」
「・・うん。ま、いっか!」
「やったーー!!」
直輝は菜月にメールをする。
『昨日は帰っちゃってごめん。色々話したい。
今夜、会える?』
川崎をデジカメで撮影し微笑む莉子。
そこへ直輝がやって来た。 `
「見る目あるね!」
「うん?」
「川崎さん。」
「・・ああ。でもまだ、出会ったばっかりだし。」
「超最高だよ、川崎さん。俺も尊敬しているし、
男から見てもカッコイイって宇都さんも言ってたし。」
「そうなんだ。そっか。」
「この間さ、送ろうと思った写真があったんだ。
でも川崎さんの彼女じゃ、メアドとか聞けないか。」
「別に、それはいいんじゃない?」
「いっか!別に友達だしね。」
「・・友達。そうだよね、友達だもんね。」
「じゃあ、赤外線・・」
直輝の携帯を見た莉子は、前に見たことがあると気付く。
バスでお年寄りに席を譲った青年が、忘れていった携帯・・。
「これ・・・!」川崎たちと野球をして遊ぶ直輝を見つめて微笑み・・
直輝のメールが菜月の携帯に届く。
メールには海へと真っ直ぐに伸びる遊歩道の写真が添付されていた。
その時菜月は代々木とベッドにいて・・。
菜月は直輝のスピードに、川崎は莉子のスピードに、
無理して合わせようとしているんですよね。
無理をしているのは、相手のことが好きだから。
でも菜月は直輝のマイペースさに苛立ちを隠せず、
とうとう爆発させてしまいました。
川崎も大人の対応を見せていましたが、内心は歯がゆかったり
するのかな。
川崎と莉子の恋を邪魔するのは宇都宮??
ありのままぶつかり合える直輝と莉子。
この二人なら恋は上手くいくのでしょうか。
過去に二度、二股を掛けられた経験のある莉子は、
菜月に二股掛けられていると知り傷ついた直輝の心を
癒すのかな。
母、姉、妹と女家族の中で育った直輝。
料理が出来て優しくて、草食系男子って感じですが、
女が男が守るもの、と意外と男っぽい考え方でした。
家族の中で男は自分ひとり。
自分がしっかりしなければ、と家族を支えてきたのかな。
実は物凄く強い人なのかもしれません。 |
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